高森師範の『「女性天皇」の成立』を読んで

高森師範の『「女性天皇」の成立』を読みました。

特に皇位継承をめぐる皇室の問題が深堀りされており大変勉強になりました。この本を読んで私が感じた皇室をめぐるポイントは大きく3つあると思います。

 

一つ目は、今の政府は皇室の安定的な継承に関して真剣に検討せず、現状維持のまま先送りにしようとしていること。例えば、政府は約一年前に、「立太子の礼」のごとく「立皇嗣の礼」を行いました。政府の言い分では、これは秋篠宮殿下が次の皇位継承者であることを内外に広く示すものとのことです。

しかし、そもそも傍系の皇嗣は継承順位の変動がありうる立場であり、にも関わらず立皇嗣の礼を行うことは、今の継承順位を維持する政府の意図が見え隠れしていると高森氏は指摘しています。

 

二つ目は、今まで何度も指摘されていることではありますが、歴史的に見て男系ではなく双系こそが日本の伝統であるということです。実際、女性天皇は歴代8人おりましたし、決して単なる間に合わせの存在ではありませんでした。

文武天皇・持統天皇の時代に制定された『大法令』では明確に女性の継承も認めているとのことです。男系のみという縛りはたかだか明治の時代に制定された歴史の浅いルールにすぎません。

また、高森氏の元正天皇は女系天皇であったという指摘は大変驚きました。当時の基本法は『大宝令』ですが、即位当時においては女系天皇とみなされていただろうというのです。

 

三つめは、政府のみならず国民全体の皇室の安定継承に関する危機感が欠如しているということです。確かに、世論調査では女性・女系天皇を支持する声が多くを占めていますし、多くの国民が愛子様が天皇になれられることに違和感を感じていないのは事実でしょう。

しかし一方で、実際の政府内の動きではまったくそれに向けた動きは見られず、先送りの繰り返し状態なのに、それに関して国民が大きな声を上げているようには思えません。政府が真剣に取り組まないのも、やはり国民が皇室に関することを政府に丸投げにしている姿勢も大きな要因ではないでしょうか。

現上皇陛下が生前退位された時、国内は祝賀ムードに包まれましたが、これにより実質の皇位継承者が悠仁さまお一人であるということに危機感を抱いた国民は果たしてどれほどいたでしょうか。

 

眞子さまや小室圭さんをめぐる一連のバッシングにしても、皇室というものが国民にとって一種のエンターテイメント化している感もゆがめません。

政府のみならず、国民全体がもっと真剣に皇室の未来について考えていくべきではないでしょうか。